意識が戻ったか、寝台がかすかに軋んだ音がして。
衣擦れの音がさらさらと囁く。
古ぼけたソファーからそちらを見やれば、
夜陰の中、それでもほのかにあった光が、そこへとすべて凝縮したような、
青みをおびた白い存在が、危なげな態で身を起こしている。
撫で肩へと羽織らせた小袖は、衿がゆるんで今にもすべり落ちそうで。
懐ろから覗く白は、自ら光を滲ませているかのような肌のいろ。
大きく抜いたうなじには、降ろされた髪が少しばかり乱れてのまといつき、
同じ金絲が頬に添う細おもてといい、
陶然としたままのしどけない恰好といい、
何とも儚げで妖冶なことか。
これがあの、戦さ場では紅蓮の戦火を蹴立てて勇猛に舞い翔る、
白金の狛と同一人物だと、一体誰が信じよう。
潤みを吸って重たげな睫毛の下、濡れた蒼眸がゆるりと瞬き、
赤々と浮いた口元が罪なほどの艶をたたえたまま微かに震えて。
啼きすぎて掠れた声が甘く呟いたのが、
―― かんべえ、さま。
問いただすだけのつもりが、つい手荒になってしまったのは、
やっぱりこちらが悪いのだろか。
泣かせたことを悔いつつも、すぐ傍らへと寄り添えば、
昼間のあの冴えた双眸が蕩け出しそうに頼りなく見上げて来。
その水脈もとうに涸れたはずの情や欲、
どこからか湧かせての掻き立てさせたお主も悪いと、
つい思ってしまう狡さが、我ながら喉に苦い。
どうやら目が覚めた訳ではないらしき、年端のゆかぬ情人へ、
寝支度を整え、まだ朝には早いぞと、
抱え込んでの添い寝をしてやり。
ふと見上げれば、窓の外、天空には、
群雲の陰から顔を覗かす月の影。
何も語らじを詰(なじ)られぬは、
そこまで遥かの彼岸に在るからかと。
天界の住人へまで不平を零しての、それから。
今は ゆっくり、おやすみなさい………。
〜Fine〜 08.6.27.
*あのままではシチさんが気の毒なのと、
勘兵衛様にもフォローが無さ過ぎなのでと、
書き足しというかアンサーというかで書いてみましたが…。
却って墓穴掘らせてましょうかしら?(おいおい)
勘兵衛様も10+α年前は若かったということで。
ちなみに、翌朝は逃げ出したのではなくて、
良親殿に車を出させて、獅子尾堂のお饅頭を買いに行ってたりします。
角出して怒ってる若女房にお土産を渡し、
これの御利益がなくならないように気をつけるから…などと
ややこしい謝り方をしてしまい、
征樹殿がおシチの愚痴を聞く日々が続いてりして。(笑)
「ただの愚痴ならまだ聞いてやれるのだがな。」
「ただの愚痴ではないのか?」
「ああ。いつも途中から勘兵衛様への惚気になる。」
「…おや。」
「そうなると止まらなくなるんで聞いちゃおれんでの。」
「それはまた。………って、どこ行かれますか、勘兵衛様。」
「いや なに、その…なんだ。////////」
(さしもの白夜叉でも居たたまれなくなったらしい)
どこまでも可愛い大人たちでございます。(こらこら)
めるふぉvv **


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